日本人の英語習得時間問題と現実的な目標設定について

よく「日本語と英語は距離が離れいているから日本人が英語を習得するのは大変!」という話を英語学習者なら聞いたことがあるのではないでしょうか。

今回はいくつかのレポートを参考にしながら実際に日本人が英語を習得するまでにどのくらいかかるのかとゼロから英語学習を始めた場合の現実的なガイドラインを作ってみたいと思います。

目次

アメリカ外交官が日本語を習得するのに2200時間の詳細

まずはこの手の議論でよく見かけるアメリカのFSI(Foreign Service Institute)が出しているデータを見てみましょう。

アメリカの外交官が日本語を習得するのに約2200時間かかるという論調で良く語られていますが、

彼らの学習環境を取り巻く要因を公式サイトや掲示板で詳しく調べてみると、

  • モチベーションのある外交官というエリート
  • 週に25時間の学校での学習×88週(←これで2200時間)
  • 4人以下の小人数クラス

とういう条件に加えて

  • アラビア語や韓国語、中国語、日本語のようなアメリカ人にとって難しい言語は88週間のプログラムのうち後半44週間をする
  • 毎日2時間はかかるような宿題も出る

とのこと。

2200時間というのは学校の授業だけでの時間で、プラスで宿題での学習と日本語習得に至っては留学までしている模様。

宿題も含めた学習時間だけでもざっくり3000時間は余裕で超えていそうですね。

以上より仮定として日本人が英語を習得するのにも3000時間は超えと見積もることも可能そうですね。

ケンブリッジ・イングリッシュ・プロファイルによるレベル別の学習時間

次にヨーロッパの人が英語を学習、習得するのにどのくらいの時間がかかるかをレベル別に分けたレポートを見てみましょう。

Introductory Guide to the Common European Framework of Reference (CEFR) for English Language Teachers.
Cambridge University Press(2013)より抜粋

CEFRレベルA1,A2が初級、B1,B2が中級、C1,C2が上級のところ、

  • ヨーロッパの人にとって上級のC1,C2レベルまで行くのに700時間~1200時間程度必要とのこと。

これはアメリカのFSIで出されたアメリカ人がヨーロッパの言語を習得する時間とほぼ一致しています。

そして日本人が3000時間必要という仮定と照らし合わせてみるとこの図表の学習時間を約3倍すれば日本人が英語を学習し、それぞれのレベルに到達するまでの時間が導けそうです

日本人が中級レベルの英語力に到達するまでの時間

次に大阪公立大学が出しているレポートを見てみましょう。

このレポートでは

  • 日本人が英語を習得するまでに2500時間くらいかかる

と結論付けております。

内容としては

  • 大学の新入生TOEICの平均スコア(2001年度)である356点から800点までのスコアアップに約1200~1500時間がかかる
  • 大学に入るまでの教育で約1000時間の英語学習に充てている

そもそもTOEIC800点という点数がCEFR(Common European Framework of Reference for Languages)換算でB1~B2(中級者)付近に実態としては位置づけられるはずで、そもそも英語の習得のベンチマークとして機能するかは心もとないところなので僕の解釈でここでは英語の中級レベルとします。

あと、大学に入るまでの教育で約1000時間を英語学習に充ててはいるものの、どれだけの生徒がその学習時間を活用できているかには大きな疑問が残るところですね。

TOEIC365点も初級レベル(CEFRぎりA2くらい)に毛の生えた程度と考えると中高での総英語学習時間はそこまであてになる数字ではないと仮定できそうです。なので実質的な中高での英語学習時間としてざっくりと1000時間の半分の500時間分と置いてみましょう。

となると中級レベルまでに達するのには少なくとも1500時間前後の学習時間が必要と考えることもできそうですね。

まとめと結論

  • 日本人が英語を習得(C1,C2レベル)するまでに3000時間以上かかると思われる
  • 日本人が中級レベル(B1,B2レベル)に到達するまでに最低1500時間前後必要

これらの数字からCambridge University Pressのグラフは約3倍すると日本人が各CEFRに到達するまでの時間になりそう。

現実的かつ健康的なガイドラインとして中学レベルの英語をほぼ忘れた人は1日3時間の学習を1年続けてB1を目指すのが良い落としどころなのではと。

高校卒業時に英検2級をやTOEIC450前後とCEFRでA2にいる人なんかは1日3時間の学習を6か月続けてB1を目指すのが良いかと。

そもそも日本人が持っている英語のペラペラの理想が高すぎるのもありますが、B1まで行ければ日本ではばっちり英語を使える人として認識されると思います。

くれぐれもや「3か月でペラペラ」や「〇〇倍の勉強効率」等のうたい文句に惑わされぬように地道に積み重ねていきましょう。

参照:

https://www.state.gov/foreign-language-training

https://adst.org/2016/12/teaching-the-foreign-service-to-speak-foreign-languages/

https://www.quora.com/What-is-it-like-to-study-a-language-at-the-Foreign-Service-Institute

Introductory Guide to the Common European Framework of Reference (CEFR) for English Language Teachers. Cambridge University Press(2013)

How Long Does It Take for Japanese Speakers to Learn English? Inagaki(2010)

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